「島しょ活性化をテーマとした高校生アイデアソン」レポート

日程:2018年8月22日-23日
場所:東京都立大島高等学校
メンバーおよび参加企業:
東京都立大島高等学校、東京都立大島海洋国際高等学校、 首都大学東京リサーチコア serBOTinQ、システムデザイン研究科、システムデザイン学部、 NEC ソリューションイノベーター、株式会社ミサワホーム総合研究所、コニカミノルタ株式会社 他
※この記事は2018年10月1日に執筆しました。文中の肩書は執筆当時のものです。首都大学東京は2020(令和2)年4月1日に、大学名称を「東京都立大学」に変更しました。

伊豆諸島をはじめとする島しょエリアは、東京都であっても経済規模が小さく人口集積率も低いため、産業活性化が恒常的な課題となっています。こうした地域を最先端のICT、IoT、ロボット技術を用いて活性化させることを目指し、産学公のコラボレーションで進められているのが「serBOTinQ Tokyo-islands project(島しょエリアの活性化プロジェクト)」です。

今年度、このプロジェクトは首都圏にもっとも近い人口約8000人の伊豆大島を舞台にして、島しょ在住者やUJIターンを希望する社会人が島に住み続けるための新しいプロダクトやサービス開発を進めています。

今回は2019年3月に予定されている「serBOTinQシンポジウム」での公開プレゼンテーションに向けて、大島の若者と大学生、企業のメンバーがチームを組み島の魅力発見に取り組んだワークショップの模様をレポートします。

2018年8月22・23日の2日間、東京都大島市の東京都立大島高等学校(以下、大島高校)で「serBOTinQによる次世代ソリューション開発ワークショップ〜島しょ活性化をテーマとした高校生によるアイデアソン〜」が開催されました。

このワークショップは、大島で暮らす高校生に彼らの生活についてヒアリングし、その“生の発言”を多角的に分析することで、次世代に必要な新しいプロダクトやサービスの可能性を探ることが目的です。

会場となった大島高校には、島内にある2つの高校(大島高校、東京都立大島海洋国際高等学校)の生徒15名、本学の学生10名、そしてserBOTinQの参加企業(NECソリューションイノベーター、株式会社ミサワホーム総合研究所、コニカミノルタ株式会社)のメンバーが集い、活発な議論が行われました。

デザイン思考を活用して
新しい暮らしの可能性を探る

初日となった22日午前、大島高校の教室に集まった参加者を前にまず行われたのが、本学の相野谷威雄(serBOTinQ・マネージングディレクター)によるワークショップの趣旨説明です。

相野谷氏は高校生とのタッチポイントとなる2日間を大切な機会として、大人には考えつかない高校生ならではの魅力的な視点やニーズをしっかりと引き出し、デザイン思考を活用しながら大島の未来のために必要なアイデアを出し合ってもらいたいと語りました。

趣旨説明に続き、高校生、大学生、企業のメンバーをミックスした3つのチームに分かれて自己紹介が行われました。
自己紹介は本格的な議論を前にお互いが打ち解けるための“あいさつ”となるだけでなく、何気ない雑談の中から高校生が抱く故郷の印象や距離感を理解するきっかけにもなります。

30分ほど時間を使って「ワークショップの参加理由」「東京(首都圏)に遊びに行く頻度」「卒業後の進路」などについて語り合い、学生は大島における生活や高校生と島との関係性を探っていきました。

高校生にIoTの一端に触れてもらうため、ランチタイムには教員、参加企業によるプロダクトやサービスのプレゼンテーションを実施。
その後、各チームに再び分かれて本格的なディスカッションが始まりました。
高校卒業後、ほとんどの若者が進学や就職のために故郷を離れる大島。あるチームでは、新しい生活で楽しみなことや不安なことを付箋紙に書き出してもらうことで、高校生自身も見過ごしてしまっている島しょにおける生活の問題点や、彼らが思い描く理想の生活を引き出そうとしていました。

「ショッピング」「移動・道」「距離感・プライバシー」「島民性」などの項目別で付箋紙を模造紙に貼り付けてアイデアを共有するチームもあれば、「島のいいところ」「島の悪いところ」「島を出たい理由」「島に戻ってきたい理由」といったテーマで議論を進めるチームも。

和気あいあいとした会話の中から、「知り合いが多くて安心できるが、競争が少なく主体性が育ちにくい」「子どもが生まれたら島に帰ってきたいが視野が狭くならないか心配」など、外部からは気づきにくい島の内状が浮かび上がり、各チームは新しいプロダクトやサービスが対象とできるようなユーザー像やアイデアのヒントをさらに探っていきます。

約2時間にわたるディスカッションが終了し、初日の最後には各チームによる中間発表・講評が行われました。
若者のほとんどが経験することになる一人暮らしをテーマにアイデアを創出しようとするチーム、島内であまり活用されていないというSNSを用いたマッチングサービスを模索するチーム、大島出身者の子育てにフォーカスしたチームなど、中間発表とはいえ着眼点はさまざま。
今回のワークショップのゴールである“1チーム2案ずつのアイデア出し”を目指して、宿泊先のホテルに戻った後も、学生は各アイデアのブラッシュアップに取り組みました。

製品化に向けたシーズ開発へ

2日目早朝、日本列島に接近していた台風20号の影響によって予定が大幅に短縮されることが決まり、最終日は初日の活動をもとに、現時点で捻り出せたアイデアの発表のみ行われました。

大島と本土の2拠点生活を送る人のコミュニティづくりの提案、ビーコン搭載のマタニティマークで妊婦を支援するアプリをヒントに島民と観光客のコミュニケーションを促進させるシステム、島民と本土に住む人を結びつけるマッチングサービスなど、ヒアリングやブラッシュアップに十分な時間が割けなかったものの、初日よりも具体性のあるアイデアが各チームから発表され、ワークショップは終了しました。

その後、東京に戻った各チームがさらなる検討を行い、提案されたのが下記のアイデアです。今後も学生たちはアイデアの製品化に向けて、テレビ会議などによる高校生とのアイデア調整やシーズ開発、プロトタイピングなどを行いながら、新しい暮らしを可能にするプロダクト、サービスの設計・デザインに臨んでいきます。

プレゼン案一覧
Team A プレゼン案 Team B プレゼン案 Team C プレゼン案 After WS