きみを死なせないための物語 宇宙考証の解説
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夜のモデル化(黄道面基準)

3.夜の長さを求める

第3話での重要なテーマである「夜」について,その長さを求めてみます.

3.1.夜の長さ

コクーンのは,コクーンが地球日陰(にちいん)を通過することで到来します.

コクーンの軌道赤道面内にあって,黄道面とは黄道傾斜角 \(i_e=23.4\)°だけ傾いているので,コクーンの軌道と地球の日陰との関係は上図のようになっています.

これを赤道面を基準として描きなおしたのが下図となります.

赤道面に差す地球の日陰の長さは,天球上での太陽赤緯の1年周期の変化(\(-i_e\)~\(+i_e\))に応じて伸びたり縮んだりしており,夏至と冬至のときには最短となり,春分と秋分のときには無限遠まで伸びます.コクーンの軌道がこの日陰を通過する場合に限り,コクーンの軌道上に「日陰通過」の部分が現れ,コクーンに「夜」が訪れます.

夜のモデル化(赤道面基準)

幾何学的関係から,以下のように求まります.

$$R’ = \frac{\sqrt{{R_e}^2 – {\left( R_e+H\right)}^2 {\sin}^2i_e}}{\cos{i_e}}$$ $$\phi = \arcsin{\frac{R’}{R_e+H}}$$

コクーンの軌道周期は,コクーンがテザーにより繋留されていることから常に地球の自転と同期しているので23時間56分4秒(1恒星日)ですが,その間に地球は太陽の周りを少しだけ公転するので,地球の日陰もその分だけ動きます.すると基準となる時間は24時間(1太陽日)でなければならないので,以下のようにしてコクーンの夜の長さが求まります.

$$T_{\mbox{night}} = 24\mbox{hrs} \times \frac{2\phi}{2\pi}$$

以上の結果を用いて,コクーンがペリジGEOアポジにあるときの年間を通じての夜の長さを求めたものが下図になります.

コクーンがペリジにあるときは,1年を通じて夜が訪れ,最長は春分秋分のときで9.36時間,最短は夏至冬至のときで9.11時間となります.

コクーンがGEOやアポジにあるときは,春分と秋分の前後の期間のみで夜が訪れます.アポジにあるときには最長でも32.4分しか夜がありません.

コクーンは春分,夏至,秋分,冬至のときに「地球降下」をしますから,いずれの場合も9時間以上の「夜」が訪れますが,第1話で述べたように「地球降下」は1週間かけて実施されます.従って,春分と秋分のときには「地球降下」を開始してから1週間ほどは30分~70分程度の日陰通過が起こります.しかしその程度の日陰通過は,コクーン住民にとっては「本物の夜」とは言えず,特に重要視されていないようですね.

それは,私たちでも皆既日食の暗闇を「夜」とは認識しないのと同じであって,コクーン住民は理屈ではなく体感的に日陰通過を「」と「夜」とに厳密に区別しているのでしょう.

季節による夜の長さ