次世代ソリューションワークショップ高校生アイデアソンレポート

日程:2019年8月26日-27日
場所:都立八丈高等学校
※この記事は2019年10月1日に執筆しました。文中の肩書は執筆当時のものです。首都大学東京は2020(令和2)年4月1日に、大学名称を「東京都立大学」に変更しました。

「島しょエリアの産業活性化プロジェクトは、人材育成プログラムの開発が大きな目標です。島しょの若者に協力してもらいながら、ここで生まれたアイデアを島の若者やUJIターンを希望する若者のためのビジネスシーズの創出につなげていきたい」̶̶首都大学東京・笠松慶子教授 の挨拶で始まった次世代ソリューション開発ワークショップ。都立八丈高校の高校生を中心に、島しょに居続けるためのポイントを探った 2日間のアイデアソンを振り返ります。

島しょに関する調査フェーズという位置付けが示す通り、3月のプレワークショップからスタートした高校生との次世代ソリューション開発ワークショップは、八丈島で暮らす高校生から彼らの生活をヒアリングして“生の情報”を引き出し、島の中の問題点や島に住み続けるための多角的な分析を、今後予定されている八丈支庁での実証講座やワークショップに生かしていくことが大きな目的の一つです。
8月26日と27日の2日間にわたり、都立八丈高校の2・3年生を中心とする参加者は、デザインシンキングのプロセスに基づきながらアイデアのプロトタイピングに取り組みました。

八丈島にどんな問題があるのか

台風の影響で延期されていた首都大学東京・難波治教授のセミナーから始まった初日。「7月のプレワークショップでどんな問題が島にあるのか、かなり具体的に検討できる手応えを感じていますから、今日は高校生に撮影をお願いしていた、島の中で気になる場所や建物の写真を元にしながら、実際に八丈島でどんな問題があるのかを検討していきましょう」という相野谷威雄 serBOTinQ マネージングディレクターの掛け声で、まず取りかかったのが生活行動の拠点マッピングです。
そもそも、今回のワークショップは「ペルソナを用いた生活シーンの書き出し」をゴールに設定しています。ペルソナとは実際の ユーザーから情報を集め、それを基準に設定されるユーザーを代表する架空の人物のこと。架空とはいえ、個人の情報を厳密かつ具体的に設定できれば、デザインプロセスのあらゆる段階で生きたユーザー像としてデザインの方向性を提示してくれる、デザインシンキングの核となる手法の一つです。そのペルソナを設定するためには、ユーザーの行動に関連する情報の取得が欠かせません。生活行動の拠点マッピングは、ペルソナの作成に向けたユーザー調査の一環となります。
実際の作業では、観光スポットから商業施設、病院、郵便局、学校等の公共機関まで、各ポイントをシールでマッピングすることで、ある地区には生活に必要なサービスや施設のほとんどが集まり、別の地区には医療機関すらごく僅かと地区の違いが次第に可視化されていきました。 また、高校生と八丈支庁、町役場の職員が互いに知っている情報を出し合うことで、若者、大人双方の立場から見える島の現状も明らかになり、ここで集約された情報をヒントに、初日の前半は 生活行動のキーとなる場所やサービスを「買い物」「食事」「公的 サービス」「趣味/遊び場」「病院」の5つのカテゴリーに分類し、 各ポイントへのアクセス方法や利用頻度、距離感などを整理する 作業にも取り組んでいきました。

デザインシンキング1 -
生活行動の拠点マッピング

デザインシンキングのプロセスでは、ユーザーへの深い共感を大切にしています(人間中心のデザイン=Human Centered Design)。解決するべき問題はあくまで特定のユーザーの問題であり、解決のためにはユーザーが考え、感じていることにについての深い理解が欠かせないからです。生活行動の拠点マッピングでは、八丈島の御賀郷・三根・樫立・中之郷・末吉の5地区それぞれでチームを作り、高校生が撮影した島内の写真や、生活のキーポイントとなる場所、その説明をA0大に印刷されたマップ上に書き加えていきました。チームはその地区で暮らす高校生、八丈支庁、町役 場の職員、案内役の首都大学東京の学生と、異なるバックグラウンドを持ったメンバーで構成。ユーザーでもある高校生の生活環境の観察を通して、彼らが日頃から考え、感じていることの手がかりを得て、本人たちも気付 いていないインサイト、潜在的なニーズを知る機会につなげます。

《写真のマッピング》
・高校生が撮影した島の写真を地図上にマッピングする
・その場所を選んだ理由や、どのような場所かのコメント等もあると良い

《付箋・メモで追記》
・写真以外にも生活のキーポイントとなる場所やその説明を書き加えて

《マッピング》
※学生・大人・高齢者の各世代で異なるキーポイントが出てくることもあるため、付箋の色を変えるなどで違いがわかるようにする
※グループごとに担当地区は決めるものの、相互に情報だしの手助けをするのは可

各拠点へのアクセス/距離感

昼食、首都大学東京・久保田直行教授のセミナーを挟んで再開されたワークショップ後半は、引き続き、各拠点へのアクセス/距離感を整理する作業に取り組みました。
まず、前半までにどんなポイントを挙げられたのか、各チームの高校生が短いプレゼンテーションを行うと、相野谷ディレクターからは「公的サービスの中には学校や幼稚園、保育園を、病院には接骨院やマッサージ店、薬局も入れてください。また、若者、大人だけでなく、高齢者はどんなところを利用するのかという視点も持って進めていきましょう」、首都大学東京の大学院生からも「仮想ユーザーがどういう生活しているのかというストーリーを考えるためにも、末吉の人は末吉だけのマッピングをするのではなく、ペルソナがどんなルートで行動しているか、地区にとらわれずに考えてください」とアドバイスがありました。
ワークショップ中盤には、島の南側、樫立・中之郷・末吉の3地区を総称する「坂上」エリアにおいて、飲食店や医療機関不足、また、バスが終わる時間が早い、道の見通しが悪くて事故が多いといった交通に関わる問題などが集中していることが見えてきたため、参加者全員で坂上の問題点について、若者、大人、高齢者それぞれの立場から問題を議論する場面も。
実際に同エリアに住んでいない高校生や社会人、学生が加わり、ユーザーに共感しながらオブザーバー(観察者)として問題点を多角的に観察、分析することで、根深い問題にアプローチすることが可能になりました。
ワークショップ終盤では首都大学東京の学生がそれまでの成果を発表。相野谷マネージングディレクターから「今回の発表では感 情的な事柄が多かったので、各地区の高齢者比率や自動車の稼働 率など、データについてもリサーチしていきましょう」と方向付 けがなされるとともに、改めてデザインシンキングのプロセスに 触れながら、ユーザーに対する深い共感が仮想ユーザーを設定する上では重要なこと、また、プロトタイプにおいても一番重要な ことはヒアリングであり、「共感できる人間を身近に感じてデザインしながら、潜在的な問題を引き上げていきたい」と強調されました。

デザインシンキング2 -
各拠点へのアクセス/距離感の書き出し

「生活行動拠点のマッピング」で挙げられたキーポイントを、「買い物」「食事」「公的サービス」「趣味/遊び場」「病院」の5つのカテゴリーに分類し、 それぞれのキーポイントへの行き方がどのようであるか、また利用頻度など、各ポイントへのアクセスや距離感に関する情報をマップシートにプロットしていきました。アクセスルートなどをどんどん書き込んでもらうこともポイントです。

《5つのカテゴリー》
・買い物:スーパーマーケット、100円ショップ、本屋、服屋、靴屋等
・食事:定食屋、居酒屋、喫茶店、ファストフード店等
・公的サービス:空港、港、町役場、警察署(交番)、消防署、高校、中学校、小学校、幼稚園、保育園
・趣味/遊び場:温泉、海水浴場、釣り場、名所・旧跡等
・病院:病院、歯科医院、薬局、接骨院、マッサージ店等

※学生・大人・高齢者の各世代で異なるキーポイントが出てくることもあるため、付箋の色を変えるなどで違いがわかるようにする
※グループごとに担当地区は決めるものの、相互に情報だしの手助けをするのは可

次世代ソリューションワークショップ:セミナー1モビリティの未来

首都大学東京システムデザイン学部教授 難波治

富士重工業デザイン部でスバルのカーデザインに従事した後、2015年に首都大学東京システムデザイン学部インダストリアルアート学科に着任した難波教授は、同学科のトランスポーテーションデザイン研究室で学生の指導に当たっています。「モビリティの未来」をテーマにしたセミナーは、「デザイナーとは何をする人?」という問いかけから始まりました。
高校生から「何かを形に......」「イメージしたものを形する人?」など意見が出る中、「私たちの生活の中でデザインされていないものはありません。お茶碗も机も洋服もどこかにデザイナーがいて、デザインされています。逆を言えば、デザインという仕事はそれだけ重要だということです」と難波教授。「みなさんを優秀な生徒にしようと考える教育も、経済も政治もデザインだし、日本を形作っている文化がデザインの結果そのもの。イメージしたものを形にするのは最後の手段で、それまでの考えるプロセスがとても大切です」と、表象的なものを形作る=デザインとしてしまいがちな頭を解きほぐしながら、これから始まるデザインシンキングで様々な思考を働かせることもデザインの一活動だと伝え、話題は専門とするトランスポーテーションデザインに入っていきました。

“向こう側へ運ぶこと”そのものを考える

難波教授は、“transportation”とはラテン語で「向こう側」を意味する“trans”と「運ぶ」を意味する“portare”を語源とする言葉で、モビリティの形だけでなく、人やモノを運ぶことそのものを考えるのもトランスポーテーションデザインの領域だと言います。まず例に挙げられたのが、 近年注目を集める自動運転技術です。長距離トラック運転手の負担軽減を目的に開発されたこの技術は、インターネットの発達によってその可能性を広げました。「自動車をインターネットに繋げることでいろんなことができる」と、難波教授はほかにもカーシェアやライドシェアなど新しいトランスポーテーションデザインの一例を紹介していきます。
また、総人口が減る一方、少子高齢化が急速に進む国内のデータに触れながら、報道される機会が増えた高齢者の自動車運転による事故や免許返納問題、過疎地の公共交通機関不足などについて、自動運転やカーシェア、ライドシェアといった新しい技術が解決のヒントになると続けました。

本質を考えて計画すること

高校生たちの気付きのヒントとして、国内外の先行事例も紹介されました。はじめに紹介された日産の「LEAF to HOME」は、電気自動車から電気を取り出して家庭に電力供給できるシステムで、排気ガスを出さないため、災害時には屋内の避難所に自動車を駐車し、電源としても活用できます。また、移動手段が乏しい地方の高齢者などを対象に、都市部への交通手段として実用化が目指されている、無印良品がフィンランド・ヘルシンキで自動運転車メーカーと共同開発している自動運転バスのプロジェクト「GACHA」も紹介されました。
環境負荷が少ないという、一般的なイメージに留まらない 電気自動車の活用事例を取り上げ、様々な側面から物事を 観察し、考えることの大切さを頭に入れてほしいと強調した難波教授は、GACHA を例にしながら「移動販売車や図書館を向こう側(高齢者の住む地域、遠隔地)に持っていってしまう例はありますが、GACHAの発想はいかにこちら 側(都市部)に連れてくるかという、今までとはちょっと 違うものの見方をしています。この島にもバスルートがいくつかありますが、こうした実例を見て、みなさんも何か感じることがあれば、新しい発想につなげられるかもしれない」と話しました。
「はじめにデザインとは何だろうと言いましたが、デザインとは問題を解決するプロセスのこと。表面的なデザインもやらなければいけないけれど、本質は何かを考えて、計画をしていくことがデザインなんです。もっとも大切なのは、デザインするものの向こう側を見ることです。何かをデザインすることでどんな新しい価値を創造できるかを考えるというスタンスで(ワークショップにも)取り組んでほしいと思います」と締めくくりました。

次世代ソリューションワークショップ:セミナー2システムデザインシンキングと
サービス

首都大学東京システムデザイン学部教授 
久保田直行

知能ロボット、計算的知能、知覚システムが専門の久保田教授のセミナーは「システムデザインシンキング」をテーマに行われました。
現在では国内でも広く認知され、様々な場面で耳にするようになったデザインシンキングと言葉は似ていますが、システムデザインシンキングは 1960~70年代に出てきた思考方法で、「システムとは何かという議論の中で生まれたアイデアが、世の中の問題を解決する能力の育成にもつながっている」と久保田教授。「システムは必ず二つ以上の要素から構成されていて、要素と要素の間には何らかの関係性が存在します。そして、その全体は要素の単なる寄せ集め以上のものであることが重要です。何かと何かを組み合わせれば、必ず2以上になりうる構成をつくることは、ものづくりやことづくりの基本です」と、アイデア創出につながる方法論としてのシステムデザインシンキングの特徴を説明しました。

「問題」とは望まれた事柄と
認識された事柄の相違

島しょの問題解決につながるアイデアを生み出すことが目 的の今回のワークショップ。そもそも「問題とは何か?」と、久保田教授は高校生たちに訊ねます。
「答えがわかっていないもの?」などと回答が出る中、久保田教授が紹介したのが、ジェラルド・ワインバーグによる問題の定義です。システム開発やプログラミングの技術者であり、コンサルタントとして『一般システム思考入門』 や『プログラミングの心理学』など多数の書籍を執筆したワインバーグは、問題とは望まれた事柄と認識された事柄の間の相違だと定義しています。
例えば、スーパーマーケットに 30 分かけて歩いて買い物 に行く高齢の女性を見て、私たちは何かサポートをしなければと声をかけるかもしれません。しかし、その女性にとって30分かけて歩くことが健康づくりの一環だとしたら、「重い荷物を持って歩くことは大変だ」という認識は、彼女にとって望まれた事柄ではなく、私たちは問題を正しく定義できたとは言えません。「今回のプロジェクトでも我々から見たら問題と思えることも、みなさんからしたら問題ではないかもしれないし、逆もあり得えます。だから今、取り組んでいるペルソナづくりは、誰がどういう問題を抱えているのかを明確にするという観点が欠かせません」と、 問題と真摯に向き合うことの重要性を久保田教授は訴えました。

何を提供するかを
いかに提供するかと捉え直す

加えて久保田教授は化学実験を例に、先入観なく物事を観察することの大切さや、新しいシステムを考える上で必ず突き当たる負の要素についても言及し、「便利なものを生み出すと、必ず負の要素が出てきます。それをいかに出さないようにするか、出てきたらどう解決するかを議論するのも私たち“システム屋”の仕事です」と続けます。
「私たちは物事を考える時、一つの側面から見て『なるほど』と思ってしまいがちですが、それとは対になる考えもあるはずです。例えば、自動車のタイヤを外して重ねれば椅子として使うことができる。そんな使い方をする人はいないかもしれませんが、分解することで見えなかった機能が表れてくることがあります。組み立てては壊すことを繰り返しながら新しい発想を得ていくことが必要です」。

セミナーでは、世界初のビジネスホテルとされ、現在のホテルで常識となっている様々な設備を発案したスタットラーホテルも紹介されました。特に、ドアを二重構造にしてランドリーに出す衣類を入れておける仕組みによって、客と従業員が顔を合わせることなく作業の効率化につなげられた実例を取り上げ、「システムが行うべきことを考えながら、人間が行わなければならないことを考える。『何を提供するか?』を『いかに提供するか?』と捉え直して、サービスのクオリティを高めることを考えるのも、システムデザインシンキングの領域です」と話しました。
その後も自身の研究事例などを紹介した久保田教授は、最後に「誰のための問題なのか、問題の解決方法がたくさんある中で、そのソリューションはどういう人に役に立つのか、どういう人にとって良いものとなるのかをシステムの観点から考えてみてください」と高校生に向けて改めて語りました。

次世代ソリューションワークショップ:セミナー3ロボットから発想する新しい何か

首都大学東京システムデザイン学部教授 武居直行

おじゃりやれ!
八丈島の言葉で「ようこそ」という挨拶から始まった武居教授のセミナーは、武居研究室で開発しているロボットの紹介をメインに進められました。 まずはじめに武居教授は「ロボットって何?」「他の機械との違いは?」「ロボットは何でできている?」と立て続けに質問、マザーグースの “What Are Little Boys Made of ?”(男の子は何でできているの?)という歌を取り上げながら「ロボットは夢の固まりなんです」と高校生たちの興味を引き付けます。
「ただ、実際は夢だけではロボットはできません。テクノロジーが必要です。昨日の久保田先生のセミナーでは人間に道案内するロボットが紹介されましたが、道案内とひと言で言っても、文字認識、ルート検索、安全に人間を誘導するモーションコントロールなどさまざまな技術が欠かせません」と話す武居教授は、自身の研究室について「私たちの研究室で目指しているのは機械的構造体と電子制御による、知的で革新的な機械システムの開発です。実際にモノを作って動かし、壊して直して評価するという繰り返しで、新しい機構を考えています」と説明しました。

ゲーム性が壊れにくいボッチャロボット

デザインが社会のさまざまな問題を解決する手段であるのと同じように、ロボットも問題解決に向けて設計していくことが肝心であると話す武居教授は、ロボットの実例として研究室で開発したボッチャロボットを取り上げました。ボッチャとはパラリンピックの正式種目でもあるユニバーサルスポーツで、目標となる白い球に向かって赤や青の球を投げたり、転がしたり、他のボールに当てたりして、いかに目標球に近づけるかを競う球技。年齢や障がいの有無を問わずプレーすることができ、障がいによってボールを投げることができない場合は、スロープ状の道具を使ったり、介助者に自分の意志を伝えることで参加することができます。
武居研究室が開発したボッチャロボットは、コントローラーさえ操作できれば、ボールの弾道や飛距離なども自在にコントロールできるロボットです。ロボットを導入すると聞くと、人間がプレーするより有利になると考えてしまいますが、もともとボッチャのボールには個体差があり、ロボットといえど正確な投球ができないため、ゲーム性が壊れにくく、ロボットのおかげで障がいがある人でも健常者と同じような条件でプレーできることが特徴です。セミナーではボッチャロボットの機能などを紹介する映像と共に、首都大学東京の荒川キャンパスで定期開催されているボッチャ体験教室にロボットが参加した際の模様も紹介されました。

身近なモノ・コトからいかに発想するか

続いて紹介されたのが、水上パーソナルビークルです。これは人間が水の上を自由に歩ければ、小回りの利きにくい狭い水路などでの清掃活動や水質調査活動、インフラメンテナンス、レスキューなどを効果的に行えるのではないかというアイデアから考案されたもの。正式名称は全方位推進型水上移動機で、搭乗者が水上で作業できるように、セグウェイのような体重移動で推進することができるのもポイントです。
この他にも研究開発中の様々なロボットを紹介しながら武居教授が強調したのは、「身近なものから発想することの大切さ」でした。インドの鞠と呼ばれ、幾通りもの幾何学的文様を作り出すことができるおもちゃから発想された伸縮自在なロボットや、鳥の羽ばたきをヒントに7年間研究開発を続けている飛行ロボットなどを例に挙げながら「もともと在るロボットから発想を得ているものもあります ゙、そうではなく、身の回りのモノを見て『これはロボットに応用できるんじゃないかな?』という気付きを元に発想しているロボットもあります。ですから今回紹介したロボットが、皆さんの新しい発想のヒントになってくれれば と思っています」と武居教授。

セミナーの締めくくりとして、ワークショップ当日の日の出前に、八丈富士と呼ばれる標高854mの西山山頂の火口の周りを巡る“お鉢巡り”を敢行した写真を披露し、高校生たちを驚かせました。

デザインシンキング3 -
ペルソナを用いた生活シーンの書き出し

「高校生」「大人」「高齢者」と3パターンのペルソナを、配布された ペルソナシートに基づいて作成し、「生活行動拠点のマッピング」「各拠点へのアクセス/距離感」で出された情報をもとに、各ペルソナが生活の中で使用するサービスの内容を書き出しました。ペルソナシートは「5地区×5カテゴリー×高校生・大人・高齢者」の計75種類を作成。このペルソナを通して解決したい課題やどういう未来にしたいかといった事柄を議論し、生まれたアイデアをスケッチやペーパープロトタイピングで表現する作業につなげます。

※学生・大人・高齢者の各世代で異なるキーポイントが出てくることもあるため、付箋の色を変えるなどで違いがわかるようにする
※グループごとに担当地区は決めるものの、相互に情報だしの手助けをするのは可

リアルな会話の中でこそ
深い解釈が可能になる

2日目のワークショップは武居直行教授のセミナーの後、初日のリサーチを通して得られた情報を元に、さらに詳細なユーザー像を描くため、各地区を代表するユーザー像と問題点に向き合うディスカッションから始まりました。
参加者全員でそれぞれの地区の交通手段や住民の特徴、コミュニティの雰囲気などを比較しながら議論を進めることで、潜在的な問題点が効果的に引き出されていきます。その後、各チームは配布されたペルソナシートに沿って、若者・大人・高齢者それぞれのペルソナの設定と、生活の中で使用するサービスの書き出し作業に移りました。
ワークショップ終盤、ペルソナの設定を終えた各チームがプレゼンテーションを行うと、「こうして実際に現地に来て、リアルな会話の中で誰かを想像しながら議論できたことで、深い解釈を得られたと思います。どの年齢層もある程度の満足感の中で生きていける環境でありながら、何かしらの不満足を蓄積している。それをどんなサービスで解決できるのか、いくつか仮説が立てられると感じていますが、今回出てきた情報は大学生がマズローを用いた要件整理を行い、共通の問題点を洗い出して、年齢層に応じた問題を見える化していきたいと思います」と、相野谷ディレクターから今後の展開が語られました。

2日間にわたるワークショップが終了し、プロジェクトは島しょのニーズをシーズ化するビジネス創出を目指すワークショップや実証講座を行う「2nd STEP」に進んでいきます。