ロボットパートナーを用いた高齢者の健康づくり支援システムに関する研究
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健康づくりは、国民一人一人が「自分の健康は自分で守る」という自覚を持つことが重要です。しかしながら、健康づくりの成果が、目に見えてわからないため、健康づくりを持続することが困難になります。
このような背景のもと、本研究では、(1)健康づくりに関する定量的な計測と評価に関する研究、(2)高齢者の自発的な健康づくりのための支援システムの開発、(3)ロボットパートナーのコミュニケーションシステムの開発を行っています。
心身の健康の維持・増進には「自分はできる」と思える自己効力感が重要です。この自己効力感に基づく内発的動機付けが日々の健康づくりなどの継続を可能と
します。したがって、本研究では、体操に関する意欲を表す指標として自己効力感を使用し、高齢者の自己効力感を向上させるような体操を提示する手法につい
て提案します。また、自己効力感をわかりやすく表現するため、この研究では、自己効力感を「できそう感」と名付けています。自己効力感は距離画像センサに
よって計測された関節角度に基づく体操の点数および発話を通じた利用者とのコミュニケーションに基づき推定します。また、本実証実験では、富士ソフト株式
会社が開発しているパルロ(Palro)を用いています。
(1)健康づくりに関する定量的な計測と評価に関
する研究
三次元距離画像センサを用いて、人間の動作を計測します。ここで、時系列関節位置情報から、人間モデルを
用いた動作解析により時系列関節角度情報を推定します。この関節角度情報から、体操における高齢者の動作を評価し、定量化します。
ロボットパートナーは柔軟体操の手本を見せながら一緒に体操を行います。ロボットパートナーは生成されたモデルを元に評価を行い,柔軟体操の終了時に動作
計測の結果を説明することで、健康づくりへのモチベーションを高めることを期待します。

(2)高齢者の自発的な健康づくりのための支援シ
ステムの開発
自
己効力感はAlbert
Banduraによって,1977年に提唱された,自分が行動することにより結果が生じるという結果予測と,それがうまく出来るかという効力予測との関係
から生じる自己に対する有能感,信頼感を意味します。ここで、結果予測とは自分が行動することにより、こういう結果が生じるであろうという予測であり、ま
ずは、高齢者自身が結果予測を行うことができなければ、対象とする行動に移ることができません。しかしながら、「うまくできそうにない」という効力予測を
してしまうと、劣等感に陥り、自分に失望してしまいます。本研究では、腕のふりや速度などが異なる難易度の高低に対し、自己効力感を増加させるようなタス
クを選択することで、体操を通じ体と心の健康寿命を延伸させる体操支援を目指します。

(3)ロボットパートナーのコミュニケーションシステムの
開発
健康づくり支援を行うためには、ロボットパートナーとのコミュニケーションのデザインが重要になります。ロボットパートナーのコミュニケーションの役割
は、高齢者との会話を通して、(1)自然に健康づくりが行えるような流れを創出すること(健康づくり前)、(2)実際の健康づくりに対し、積極的に取り組
める状況を創出すること(健康づくり直前)、(3)日々の健康づくりの結果から、継続を促すこと((健康づくり直後)などが考えられます。
(1)自然に健康づくりが行えるような流れを創出するためには、天気やニュースの話題などから、自然と外出を促しつつ、外出の前の体操への自然な流れを
対話の中にいれます。
(2)実際の健康づくりに対し、積極的に取り組める状況を創出するために、事前に、高齢者に点数予測をしてもらいます。点数予測には、主に、二つの役割
があります。一つ目は、点数を予測することにより、自分自身の「できそう感」を評価することです。自分自身の状態を知ることが健康づくりへのモチベーショ
ンにも繋がります。二つ目は、点数を予測することにより、自分の目標に向かって、真剣に取り組もうとする態度です。目標を持って、行う場合とそうでない場
合とでは、やはり、結果に大きく違いが出ます。
(3)日々の健康づくりの結果から、継続を促すためには、予測された点数と実際の評価結果との差で、相対的な評価を行い、「できそう感」に基づく、会話
を行います。前回の結果から改善されたところと、次回へのアドバイスなどが重要になります。

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