空中音響ピンセット | Mid-air acoustic tweezers

空中音響ピンセットとは

空中音響ピンセット(Mid-air acoustic tweezers)とは,本研究室で開発を進めている音響ガジェットです.音響放射力を利用して,微小物体を選択的に非接触でピックアップすることができます.
研究成果として,
■Mid-air acoustic tweezers for non-contact pick up using multi-channel controlled ultrasonic transducer arrays, Japanese Journal of Applied Physics, 2021. 10.35848/1347-4065/abfebd
■Improvement of Mid-Air Acoustic Tweezers for Non-Contact Particle Picker, IEEE IUS 2019, 2019. 10.1109/ULTSYM.2019.8925639
■Experimental feasibility study of non-contact acoustic picker considering effect of stage, IEEE IUS 2018, 201. 10.1109/ULTSYM.2018.8579851
などを報告しています.

音響浮揚の研究の歴史

音波が異なる媒質間を伝搬するとき, 物体を押すような直流的な力を観測することができる. この力は音響放射力と呼ばれ, 古くから研究がなされています. 音響放射力の特徴としては, 非接触で物体に力を与えられることであり, 接触することが難しい物体への応用展開が考えられます.
さらにこの音響放射力を応用し, 物体を空中に浮遊させる音響浮揚と呼ばれる技術が知られてます. 非常に強力な超音波を用いることにより微小物体の浮遊や非接触輸送などが可能となるわけです.
音響浮揚の一例として, 定在波を用いて微小球体を浮遊させている様子を下の図に示します. 定在波による音圧の腹の位置から節の位置に微小物体は力を受けます.図では対向させた超音波センサから周波数40[kHz] (波長λ ≈ 8.5[mm]) の超音波を送信し定在波を発生させ, 微小球体を浮遊させています. したがって,図では, 定在波による音圧の節の位置に微小球体は捕捉されるため, λ/2 ≈ 4.2[mm] の間隔で捕捉されていることになります.


空中音響ピンセットの初期システム

Eurekalertにて,空中音響ピンセットの動画を公開しています.このサイトの動画が本研究室で作成したオリジナルです.




また,転載されたYoutubeでは,2022年2月現在,7万回再生を記録しています.



空中音響ピンセットの深化

半球型トランスデューサアレイをマルチチャンネル化し,逆フィルタによる最適化を用いて適応的な位相振幅制御技術を巧みに組み合わせることで,音波を利用して完全非接触で空間にある微小物体を選択的に拾い上げる装置「空中音響ピンセット」の深化に成功しました.
半球型トランスデューサアレイの駆動方法として、半球状のアレイの対向する半分を同位相で駆動する方法と逆位相で駆動させる方法を巧みに組み合わせ,ステージと音響トラップ位置の距離によって適応的に形成する音場を修正します。

空中音響ピンセットの将来

空中音響ピンセット(Mid-air acoustic tweezers)は,非対向型のアレイを利用しており,メカニカルアームの先端に装着することが可能です.将来は,宇宙ステーションなどでの実験などにも応用可能と考えています.