Research


【トランスファプリントを応用したMEMS作製】
 トランスファプリントはスタンプを用いて薄膜やナノ材料を基板に転写する加工技術であり,従来は電極などの2次元パターン形成に用いられてきた.当研究室では加工基板にトランスファプリントを行うことで,薄膜の立体構造(機械要素)を形成することに成功した.下の写真は厚さが僅か70nmのAu薄膜で作製した両もち梁構造である.トランスファプリントは大気環境下で実施可能であり,表面処理技術を組み合わせることで幅広い基板材料に対応できる.したがって,トランスファプリントを応用すれば,柔軟な高分子材料に機械要素を有するMEMS(マイクロセンサー等)が簡易に作製できる.

A. Kaneko et al., Int. J. of Automation Technology, 13, 6, (2019), 810-816.


【導電性ポリマーによるマイクロアクチュエータ作製】
 導電性ポリマーのポリピロール(PPy)に電解質溶液中で電圧印加すると,イオンの吸収または脱離が生じて,その体積が変化する.この特徴を利用して,PPy自立膜を用いたマイクロアクチュエータの作製に成功した.電解質溶液や細胞培養液の中で,PPy膜が面内方向に膨張して,写真のような大きなたわみを生み出す.PPyは化学的安定性,生体適合性を有しているので,μTASや生細胞を扱うようなバイオマイクロデバイスへの応用を試みている.

K. Kawaguchi et al., Int. J. Automation Technol., 14, 2, (2020), 167-174.


【表面力測定法に関する研究】
 マイクロ・ナノスケールの物体では,表面力(ファンデルワールス力など)の大小が,デバイスの製造工程(例:ナノインプリントの離型性)や機能(例:プリンタ用トナーの付着性)において特に重要となる.エリオニクス社のESF-5000は表面力をnNオーダで再現性よく測定できる.当研究室では,自己組織化単分子膜(SAM)などで表面エネルギを制御したプローブを作製し,同プローブを応用した任意二表面間の表面力の間接測定法などを開発している.

長橋ほか,精密工学会誌,86, 1, (2020), 93-98.


【微粒子列を利用した細胞の自律パターニング】
 パターン基板と移流集積法を併用することで,直径数μm(以下)の微粒子を所定の位置に配列させることができる.当研究室では自己整列した微粒子の表面アスペリティを利用し,細胞の選択接着(自律パターニング)を試みている.この表面創成法は半導体プロセス等に比べて簡易で,かつSAM等による表面修飾が可能である.

I. Takeda et al., Materials Scienceand Engineering C, 50, (2015), 173-178.


【研究キーワード】
ナノ・マイクロ構造,ナノ・マイクロ加工,表面,MEMS,微粒子,トランスファプリント,バイオ,細胞,自己組織化,
自己整列,表面テクスチャ,濡れ性,導電性高分子,センサー,精密工学,機能表面,薄膜