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計算機援用機体設計学講座:研究テーマ

当研究室では,Multi-additional sampling 法を実装した大域的最適化手法や空力を中心とした
多分野融合シミュレーションを用いて,次のような研究を行っています.
*括弧内は共同研究や学生の技術研修に基づく実施,共同研究自体は終了したものも含みます.

テーマ目次(クリックすると該当項目にジャンプします)

航空宇宙輸送機に関する研究

超音速航空機の多分野融合設計,超音速前進翼の離着陸性能
火星探査飛行機に関する研究
火星探査機ヘリコプタの空力最適設計
高静粛・低燃費型旅客輸送機(幅広胴体機,翼胴融合機など)の空力最適設計
高揚力翼装置(スラット,フラップ)設計に関する研究
大気圏再突入カプセルHTV-Rの空力・運動解析
ハイブリッドロケットを用いた宇宙輸送機の概念設計及び最適化

最適化・設計に関する研究
発見的最適設計法に関する研究
巡回セールスマン問題の開放を応用したスペースデブリ投棄軌道の最適化に関する研究

その他の研究
自動車ターボ過給機に用いる遠心圧縮機羽根車の空力最適設計
機械学習に基づくCFDの効率化,未来予測,帰納・演繹の融合手法

航空宇宙輸送機に関する研究

超音速旅客機の多分野融合設計,超音速前進翼の離着陸性能
(JAXA航空本部提案公募研究 採択課題)

超音速前進翼機 超音速機(音より速く飛ぶ飛行機)は英仏で共同開発されたコンコルドがアメリカ-ヨーロッパ線を中心にかつて活躍していましたが,超音速飛行時に生じるソニックブームという騒音現象や高い空力抵抗が招く劣悪な燃費が問題となって2003年に退役してしまい,それ以降は我々民間人が利用できない状況が続いています. 超音速機を実現するには,先にも述べたソニックブームと空力抵抗の低減を同時に行う必要があり,既存の枠に囚われない革新的なアイデアが必要といえます. 当研究室ではそのアイデアのひとつとして現在の旅客機の巡航速度の約2倍(マッハ1.4~1.6)程度で飛行する前進翼を用いた超音速機を提案しており、この実現に向けて低ソニックブーム・低抵抗となる機体形状の設計や,前進翼機が苦手とする離着陸性能を改善するための研究を行っています.

高静粛・低燃費型旅客輸送機(幅広胴体機,翼胴融合機など)の空力最適設計
(JAXA航空本部との共同研究)

超音速前進翼機 空港の騒音規制や飛行機に求められる燃費要求は年々厳しくなってきており,既存の飛行機の形状では細かな改良を行ったとしてもいずれこれらの厳しい要求に応えきれなくなるのではないかと危惧する声があります. そこで厳しい騒音や燃費の要求に耐えうる既存の形状に囚われない斬新な機体デザインの検討が世界中で行われており,当研究室でも主に幅広胴体機や翼胴融合機について研究しています. 写真の機体はエンジンを胴体の上の配置し,垂直尾翼で覆うことで離着陸時にエンジン騒音が直接地上に届きにくいように設計されています. こういった機体アイデアが要求される性能を満たせるのかシミュレーションによる検証を行ったり,具体的にどのような形状で設計すれば性能が向上するのかを進化計算による最適設計法を用いて調査したりしています.

高揚力装置(スラット,フラップ)設計に関する研究(JAXA航空本部との共同研究)

スラット周りの流れ 世界的な航空輸送需要は高まりつつあり,多くの空港で離陸・着陸数の増加していることから,空港周辺での騒音規制の厳格化が予想されています. これに対応するため,航空機の更なる低騒音化が求められています. 航空機騒音は主に「離着陸時に展開される降着装置や高揚力装置(スラット,クルーガーフラップ,フラップ)から発生する機体空力騒音(風切り音)」と「エンジン騒音」の2種類があります.近年,ジェットエンジンの低騒音化技術の向上により,エンジン出力の絞られる着陸時にはエンジン騒音が機体空力騒音を下回りつつあります. このように機体空力騒音が将来の低騒音化へのボトルネックになりつつあるため,機体空力騒音を低減させることが必要とされています. 本テーマはJAXA航空技術部門と共同研究を行っており,JAXA所有のスーパーコンピューターや流体解析ツールを用いて研究しています. 現在,高揚力装置のスラットやクルーガーフラップを対象に数値流体シミュレーションと進化計算法を用いた設計を行うことで,騒音性能と空力性能を両立した形状獲得を目指しています.

火星探査飛行機に関する研究(JAXA宇宙科学研究所・東北大流体研との共同研究)

火星飛行機 2021年現在,火星探査にはオービタ(衛星)やローバ(車両)を用いることが一般的とされていますが,探査範囲と観測精度の両立に限界があるといわれています. そこで,広範囲かつ高解像度の観測を達成する新たな手段として飛行機型の探査機を用いることが提案されています. しかしながら火星は地球に比べて重力は1/3,大気密度は1/100しかないため,約33倍揚力を発生する翼が必要であることや,低密度低温な火星大気によって低レイノルズ数かつ高マッハ数な飛行環境となることから,地球で用いられる一般的な飛行機の設計ノウハウが利用できず,一から技術開発を行う必要があります. さらに,構造重量を可能な限り抑えつつ,火星大気圏に突入するためのエントリーカプセルに収納できるコンパクトな機体形状にしなければならない点も火星飛行機の実現を困難にしています. 当研究室ではJAXAや東北大と共同で火星探査飛行機の研究を進めており,主にその開発中の機体の空力評価,飛行最適化,プロペラを付けたときに機体にかかる空力的な影響の調査,エアロアシストによる翼展開に関する研究(火星エントリーカプセルに収納されている時の折り畳み状態から,カプセル放出後にどうすればうまく翼を展開して飛行できる状態になれるかどうか)等を担当しています. 2021年6月には開発した機体の高高度飛行試験が北海道大樹町にて実施され,当研究室からも火星飛行機を研究している学生が実験に参加しました.

火星探査機ヘリコプタの空力最適設計(JAXA研究開発本部との共同研究)

HAMILTON 火星にある一部のクレーターには地下空洞に繋がる縦孔があるとされています. この地下空洞内には宇宙から降り注がれる放射線などが届かないことから生命や水の存在が期待される他,将来有人探査が行う際の探査拠点の候補として有望視されています. こういった場所を探査するには垂直移動や前後左右柔軟に動くことが必要なため,ヘリコプタが適任です. 当研究室ではこの火星縦穴探査ミッション達成に向けて,JAXA,ISAS(宇宙科学研究所),工学院大と共同で写真のような探査ドローンの開発を進めています. 当研究室では主に進化的計算法と空力シミュレーションを駆使して効率よく飛行できるブレード形状の設計を行っています.

宇宙機に関する研究

大気圏再突入カプセルHTV-Rの空力・運動解析(JAXA航空本部研修生)

HTV-R 宇宙ステーション-地上間の人や物資輸送に用いられる鈍頭物体形状の大気再突入カプセルは,大気突入後の超音速域から亜音速域においてカプセル後流の複雑な非定常現象により動的に不安定になることが知られています. この現象はパラシュート開傘時に大きく影響し,安定した着陸を困難にしています. またこのことは風洞を用いた過去の自由振動試験においても,振動振幅が発散する現象や,リミットサイクル振動等として報告されています. この現象のメカニズムを解明するために,私たちは数値計算からアプローチで研究をしています. カプセル後流の流れ場は非常に複雑で,パッと見ただけでは理解が難しいです. そこで私たちはこの流れ場にモード分解(固有直交分解:POD, 動的モード分解:DMD)を利用します. この手法によって複雑な流れ場から特徴的な流れ場を抽出することが可能になり,現象の解明につながる要素を検証することが出来るようになります.

スペースデブリ投棄軌道の最適化・進化計算法に関する研究
(JAXA研究開発本部との共同研究)

デブリ投棄軌道最適化 宇宙開発において,近年増加を続けているスペースデブリが大きな問題となっています. スペースデブリとは,運用期間を終えた人工衛星やロケット上段部などの「宇宙のごみ」のことを指します. 軌道上に放置されたスペースデブリの多くは制御を行うことができず,運用中の人工衛星等と衝突する危険性があります. 更に,デブリ同士の衝突で大量の破片が発生し,それらが次々と互いに衝突することで連鎖的にデブリが増殖するケスラーシンドロームと呼ばれる現象の発生が危惧されています. それを解決する手段として,デブリの自然な落下を待つのではなく能動的なデブリ除去が必要とされています. その際に,デブリ除去効率を高めるために1度に複数のデブリを除去する方法が考えられます. 当研究室では,進化計算を用いた「巡回セールスマン問題」の解法をもとに,1機の回収衛星が複数のデブリを順に回収し,地上に落下させるまでの燃料効率を最大化するような軌道を検討しています. また,地上に落下させる際に想定外の場所に落下する危険性を数値化し,人的被害の発生確率を最小限に抑えるように軌道を最適化する研究も行っています.

ハイブリッドロケットを用いた宇宙輸送機の概念設計及び最適化
(JAXA宇宙研・東北大との共同研究)

ハイブリッドロケット設計 現在,宇宙輸送に用いられている主要なロケットには固体ロケットと液体ロケットがありますが,近年固体ロケットエンジンと液体ロケットエンジンのそれぞれの利点を併せ持つ,低コストかつ安全性の高いハイブリッドロケット(以下HR)が注目を集めています. しかし,HRの問題点として低い燃焼効率・燃料後退速度があげられ,これらの問題点を解決するために様々な燃焼方式が提案されてきました. また,HRのシステム全体に関する設計を行う際には,燃焼室圧力や混合比,ノズル開口比など複雑なパラメータ設計が必要になります. そこで,当研究室では将来のHR打ち上げ実現に向け,様々な燃焼方式におけるHRの評価手法を構築し,進化計算手法の一つである遺伝的アルゴルズムを用いた多目的最適化を実施し,HRの設計知識の獲得・性能の傾向調査に関する研究を行っています.

最適化・設計に関する研究

発見的最適設計法に関する研究

当研究室では進化的アルゴリズムや近似関数法をベースにした最適設計法を用いて航空機・宇宙機を設計して様々な知見を獲得しているわけですが,設計法に関する研究も行っています. Kriging法や放射基底関数といった近似関数に関する研究,進化的アルゴリズムに関する研究,Multi-Fidelity設計法や多点並列追加サンプリングなど設計の枠組みの開発など幅広く行っています。

その他の研究

自動車ターボ過給機に用いる遠心圧縮機羽根車の空力最適設計

インペラーの流れ場 近年深刻化する環境問題に対応するため,自動車エンジンの燃費向上が求められています. その方法の一つにエンジンの排気量を下げ,その代替としてターボ過給機(排気ガスによりタービンを回転させ,その同軸上にある遠心圧縮機羽根車を回転させ,エンジンに送る空気を多くして出力を上げる機械)を用いるものがあります. ターボ過給機による燃費向上度は,その中の遠心圧縮機の羽根車形状で変化します. しかし,羽根車は複雑な形状を持つ部品で,従来の人の手による設計では,性能の革新が困難という問題があります. そこで当研究室では,自動車メーカーと共同で,CFDと呼ばれる空気の流れをシミュレーションする手法と,遺伝的アルゴリズムと呼ばれる最適値を効率よく探索する手法を併用し,これまでにない性能を持つ羽根車形状の設計を目標に,研究を行っています. また形状の設計にとどまらず,実物を用いた性能試験や,データ分析の技術を駆使し,「どうして良くなるのか」という性能向上の現象理解まで行っています.

機械学習に基づくCFDの効率化,未来予測,帰納・演繹の融合手法

機械学習による流れの予測 近年の計算機性能の発達に伴い,それまでより大規模かつ高精度なCFDシミュレーションが可能になっています. 一方で,DNS等の高コストな計算では時間的制約から計算可能な格子数が限られるなど,計算に必要な時間は依然として問題になっており,CFDの代替となる手法が求められています. 本研究では,ディープラーニング(深層学習)を用いてCFD結果を学習することで時系列情報を持つ流れの特徴抽出を行い,一定時間の流れの情報からその先の流れの情報を予測します. 深層学習とは,近年急速な発展を遂げ様々な分野で成果を上げている機械学習手法であり,人工ニューロンと呼ばれる脳の神経細胞を模擬した演算処理を多数結合したニューラルネットワークを用いて複雑な関数を高い精度で模擬することが可能な手法です. 提案手法では,高次元のデータを低次元に圧縮するオートエンコーダと時系列データを学習することが可能なLSTMを用いて,通常多くの時間がかかるCFDをモデル化することで流れのシミュレーションに必要な時間を大幅に短縮することを目指します.

科研費獲得状況

KAKEN 金崎雅博(研究者番号:10392838)

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