熱系



熱制御系(TCS: Thermal Control Subsystem)では,衛星が正常に動作できる適切な温度範囲を,ミッションの全期間,即ち,打ち上げから運用終了時までの間,満たし続けられるように,衛星内部の温度をコントロールする役割を担っています.


衛星に搭載されている機器には,各々正常に動作できる温度範囲(許容温度範囲)が存在します.万が一この温度範囲を超えてしまうと,性能が低下したり,場合によっては動作しなかったりと,衛星システムに大きな影響を与えることとなります.特に,ORBISのように理学観測を実施する衛星では,観測機器を常時冷やさなければならない等,より厳しい熱的な条件も存在します.




衛星の温度環境は衛星内外の熱源(太陽から放射されるエネルギーや,地球から放射される熱エネルギー,各機器から発せられる熱,等)によって変化していきます.宇宙空間では大気が存在しない為,対流現象は起こらず,最終的に熱伝導や輻射によって衛星の温度分布が決まります.


このような条件を考慮しながら,衛星内部の温度が適切な範囲内に納まるように設計を行っていきます.具体的には機器の配置を変更する,構造部品の材料を変更する,材料表面に特殊な塗装や加工を施す等の工夫をしていくことになりますが,場合によってはヒータ等の熱制御機器を用いて衛星全体や各機器の温度をコントロールすることもあります.

また,これらの設計結果が適切であることを,ソフトウェア上での解析結果や真空チャンバ内で実施する熱真空試験の結果を比較しながら確認していきます.