姿勢系



通称ADCSと呼ばれています.ADCSとは,Attitude Determination and Control Subsystemの略で,役割としては,文字通り「人工衛星の現在の姿勢を決定すること」と「人工衛星を所望の姿勢に制御すること」が挙げられます.みなさんご存知の通り宇宙環境では,真空,低重力といった我々が生活している環境とは大きな違いがあります.また,太陽光や希薄な大気,地磁気などによる外乱が作用し,放っておくとミッションはおろか地球との通信もできない状態になってしまいます.そのため衛星の向き(姿勢)を制御する必要があります.特にORBISのような理学系のミッションでは,高い姿勢決定・制御精度が必要になります.一般的に,人工衛星がどのような姿勢をしているかは人工衛星に載せた恒星センサ,太陽センサ,磁気センサやMEMSジャイロを用いて,姿勢を決定します.しかし,センサやジャイロにはノイズというものが存在し,より正確に現在の姿勢を決定するためには,センサの出力からノイズを除いた「真の姿勢」を把握しなければなりません.そこでカルマンフィルタというアルゴリズムを用いることで真の姿勢角を推定し,より正確な姿勢を決定します.



図


その決定した姿勢角をもとに,アクチュエータを用いて,必要なトルクを生み出し,所望の姿勢に制御します.先にも述べた通り,ORBISでは理学ミッションなので姿勢制御精度要求は0.1°と非常に高精度制御が要求されます.そのためORBISでは,リアクションホイールというアクチュエータ(駆動装置)を使用します.リアクションホイールはコマのようなもので,ホイールを回転させることで人工衛星の角運動量をホイールへ保存し,姿勢の変更を行います.

ORBISがミッションをするための要求姿勢制御精度を満たすかどうかは,先にも述べたとおり地球上と宇宙環境下では大きく環境が違うので,実験で検証することが難しいです.そこで私たちは,MATLAB/Simulinkというソフトを使用してソフトウェア上で,その要求姿勢精度を満たすことができるかを検証しています.具体的にSimulink上でのシミュレータの概略図は以下のようになっております.



図


シミュレータには環境モデル,センサモデル,アクチュエータモデルが組み込まれています.人工衛星の姿勢などをダイナミクスや姿勢決定アルゴリズム,制御アルゴリズムで計算することで,宇宙での人工衛星の姿勢や角速度の変化の様子をシミュレーションすることができます.このシミュレーション結果から,姿勢要求精度を満たすことが出来るかを検証しています.


ADCSはORBISがミッションを成功させるうえで必要不可欠な系であり,大変重要な役割を担っています.