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KUBOTA Lab. JAPANESE→ENGLISH
研究概要

研究内容の紹介です。
(注意)
現在、「研究概念」「研究内容」については、更新中のため、
リンク切れになっているページがありますが、ご容赦下さい。

ロボットの知能

【研 究概要】
本 研究室では、構成論的・システム論的・計算論的な観点から、ロボットの「知能」に関する様々な研究開発 を行っています。
 [構成論的な研究]で は、脳科学や心理学などで議論されている考えに基づき、仮説的なモデルを考え、そのモデルをコンピュー タシミュレーションやロボットを用いた実験により、検証を行っています。
 [システム論的な研究]で は、研究対象に含まれる現象や問題の要素を明確にし、構成要素間の関係や階層性を明確にしつつ、情報の 伝達・共有、情報間の制約関係を考慮しながら、研究開発を行っています。
 [計算論的な研究]で は、探索、最適化、推定、予測、学習等に関する計算知能に基づく方法論を主に用いた研究開発を行ってい ます。
 構成論的な研究における仮説的なモデルを考えるためには、構成要素の関係性を考えるためのシステム論 的な観点や構成要素の役割や機能を考えるための計算論的な観点が必要ですので、これらの観点は、互いに 切り離すことができず、包括的な観点が重要になります。本研究室では、このような包括的な観点を重要視 した研究開発を行っています。

【応用研究】
 本研究室では、情報技術・ネットワーク技術・ロボット技術を有機的に統合するための知能化技術に関す る研究を通して様々な社会的・工学的問題の解決に取り組んでいます。具体的には、システムのデザイン を、ヒトとヒト、ヒトとモノ、ヒトと空間を
(1)物理的につなぐ「インタラクション・デザイン」
(2)情報的につなぐ「コミュニケーション・デザイン」
(3)感性的につなぐ「エクスペリエンス・デザイン」
に関する研究を通して、ロボットパートナーの開発を様々な観点から行っています。

 過去に、本研究室で議論してきたことを、以下にまとめています。
 [知 能を考え、システムを創造する(2010)]



マーク 研究室のロボットの紹介
マーク 健康づくり支援システム
マーク リハビリテーション支援システム
マーク 遠隔操作システムに関する研究
マーク 3次元可視化システム
マーク 複数ロボットの協調行動に関する研究
マーク 情報構造化空間とセンサネットワーク
マーク すれちがい通信
マーク 情動モデルに基づくロボットの表情表出に関する研究
マーク 予測に基づく知覚システムのための構造化学習
マーク デザインと機能の共進化的最適化
マーク 人間とロボットの相互学習
マーク 観光情報支援システム

【構成論的な研究】


   構成論的な研究では、脳科学や心理学などで議論されている考えに基づき、仮説的なモデルを考え、そのモデルをコンピュータ シミュレーションやロボットを用いた実験により、検証を行っています。
 構成論的なアプローチ(ConstructiveApproach)は、「作ることによる理解」を目指す手法であり、対象 とする現象や問題を観察・解析・記述する手法と相補的な手法です。例えば、人工知能の分野では、人間は、このように問題を解 いていると考えると、その考えにあわせたアルゴリズムを考え、それを用いて、様々な問題を解いて、その有効性を議論します。 人工生命の分野では、様々な生物の複製方法や進化の仮説に基づくコンピュータシミュレーションを行い、どのような条件があれ ば、生物のように自己複製ができるのか、どのような条件があれば、進化が起こりうるのかというような十分条件に関する議論を 行っています。また、認知ロボティクスの分野では、人工知能や人工生命などの分野で提案された方法論を実装し、生物のような 振る舞いを学習・創発する仕組みを解明しようとする試みが行われています。しかしながら、このような考えが真に正しいという ような証明もできませんし、得られたシミュレーション結果や実験結果は、生物の振る舞いとは大きく異なるかもしれませんが、 実用的なシステムを開発するためには、しばしば、役に立ちます。この「役に立つ」ということが工学において極めて重要で、対 象とする問題を解決するために、脳科学や心理学における知見が役に立ちます。過去に、「ロボットに感情は必要か?」という議 論が何度も行われてきましたが、「感情」という概念の導入が、対象とする問題を扱う上で、非常に役に立つこともあります。
 このような背景のもと、本研究室では、脳科学や心理学などの知見を積極的に取り入れた研究開発を行っております。例えば、 生態心理学で議論されている知覚-行為循環の概念に基づく移動ロボットの制御に関する研究の他、情動、感情、ムードを用いた 情動モデルに基づくロボットの学習の方法論や、情動モデルに基づく場所依存記憶やエピソード記憶、グライスの協調の原則や関 連性理論に基づくロボットの自然なコミュニケーションに関する研究などを行ってきました。また、ロボットパートナーを用いた 高齢者の健康づくりに関する研究では、社会的認知理論の一つである自己効力感、社会心理学などで議論されている自己奉仕バイ アス、行動心理学におけるフレーミング効果などの考えに着想を得た定式化を行い、ロボットのバーバル・コミュニケーションを 通して、健康づくり支援への影響に関する検討を重ねています。






【システム論的な研究】


  システム論的な研究では、研究対象に含まれる現象や問題の要素を明確にし、構成要素 間の関係や階層性を明確にしつつ、情報の伝達・共有、情報間の制約関係を考慮しながら、研究開発を行っています。
 例えば、ロボットの遠隔操作を知的に実現するためには、以下の図に示すように、環境センシング、環境モニタリング、環境モ デリングなど、ロボットの知覚・認識に関する研究から、タスク・経路計画、ロボット制御に至るロボットの行動、さらには、遠 隔モニタリングや遠隔オペレーションなどのヒューマンインタフェースに関する多岐にわたる研究開発が相互に関連します。



 
 この図では、階層が上に行けば行くほど、情報が構造化され、大域的な観点から知識として利用可能な情報を用いて、事前に計 画を考えたり、比較的、リアルタイム性が低く、一方、階層が下に行けば行くほど、局所的な観点から、リアルタイムな計測と制 御を必要とする構造となっています。また、実際、研究開発を行う上で、左右の関係は、計測と制御、モニタリングと意思決定、 特徴抽出と予測、地図構築と経路計画のように、対にすることにより、関係性が明確になります。
 さて、この図を用いた議論における重要なことは、このような上下左右の関係における論点の整理です。例えば、環境モニタリ ングを対象とした研究では、何をモニタリングすべきかを考えるためには、その上位の特徴抽出が大事であり、また、特徴量をモ ニタリングするための下位から伝達される環境情報の取捨選択を考えなければなりません。さらに、環境センシングでは、上位の 環境モニタリングを持続させるための、サンプリング間隔の制御や計測の粒度を調整する必要があります。このように、上位から のトップダウン的な制約と下位からのボトムアップ的な情報伝達の構造を明確にできます。また、環境センシング層、環境モニタ リング層、特徴抽出層間で共有する変数を用いて、互いに調整し合うカップリング構造に関する研究に展開することもできます。
 次に、左右の関係を考えると、一般的には、環境センシングからロボット制御、地図構築から経路計画のように、左から右方向 への一方的な議論が中心のように見えますが、効率の良いセンシングを行うためのロボットの姿勢制御、未知な環境や動的に変化 する環境の地図を構築するための経路計画のように、右から左方向への研究へと展開することもできます。

 ロボット工学の分野では、システム論的なアプローチ(SystemsApproach)は、様々な観点から行われています が、本研究室では、地域コミュニティと連携しながら、高齢者の見守りや地域コミュニティの活性化にシステム論的な観点を取り 入れた研究を進めております。



 ここでは、計算論的な観点とシステム論的な観点から、見守りを考えることを目指して計算論的システムケア (ComputationalSystems Care)とよんでいます。具体的には、QOL(Quality of Life)とQOC(Quality ofCommunity)の相乗的な改善を目標に、個人を中心として捉えるヒューマンセントリックシステムとコミュニティを中心として捉えるコミュニティセントリックシス テムの観点から研究開発を進めています。この枠組みにおいても、上下左右の関係は、非常に重要です。

 また、その他の事例として、本研究室では、複数の大学や病院と連携しながら、リハビリテーションの支援にシステム論的な観 点を取り入れた計算論的システムリハビリテーション(Computational Systems Rehabilitation)に関する研究を進めております。


計算論的システムリハビリテーションの概念


 計算論的システムリハビリテーションでは、対象者への支援とセラピストへの支援を相乗的に行えるようなシステム開発を行っ ています。具体的には、スマートデバイスを用いた半側空間無視に関する計測、失語症患者のリハビリテーション支援、リハビリ テーション患者の動作計測などを行っています。

 以上のように、本研究室では、対象とする問題をシステム論的な観点から考えることにより、人間とシステムのかかわり方や、 誰のための支援なのかを明確にしつつ、構成要素間の関係性を考慮した研究開発を行っています。

【参考】
 システム論的なアプローチに基づくシステム化技術や解析手法は、様々な分野で展開されており、システム生物学 (systemsbiology)など、systemsを名称に用いた学問分野が確立されている。例えば、横幹連合システム 統合学調査研究会では、システムイノベーションを目指し、システムケア、システム防災、リステムリハビリテーションなど、シ ステム論的なアプローチに基づく議論が行われている。







【計算論的な研究】


  計算論的な研究では、探索、最適化、推定、予測、学習等に関する計 算知能に基づく方法論を主に用いた研究開発を行っています。
 構成論的な研究では、仮説的なモデルの構築を試み、システム論的な研究では、構成要素間の関係性などを明確にしようと試みます が、探索、最適化、推定、予測、学習などの構成要素の役割などを、どのように扱えばいいのかを考えながら、議論を進めて行く必要 があります。つまり、最終的なシステムの構築には、計算論的な方法論や、それらを用いた全体的なアルゴリズムの構築が必要不可欠 になります。したがって、本研究室では、対象とする現象や問題を分析しつつ、それらを扱うための計算論的な方法論を提案していま す。例えば、未知環境におけるロボットを用いた遠隔モニタリングでは、対象とする環境地図などが無い場合、ゼロから地図を構築し ていく必要があります。その際、地図の大きさをどの程度、用意しておけば良いかなどは、事前にわかりません。以下の例において、 対象とする環境(左図)に対し、障害物により占有されている場所を回避しながら、スタート地点からゴール地点への移動を考えてみ ます。



   経路探索を行うためのセルのサイズを小さくした場合(右上図)と中程度の場合(右中図)、経路を求めることができ ますが、セルのサイズを大きくした場合(右下図)、この問題を解くことができません。また、右上図の地図を用いると スタート地点(S)からゴール地点(G)までの経路探索を行う際、セルのサイズが小さいと(右上図)、障害物から離 れた経路を求めることができますが、探索に計算コストがかかってしまいます。一方、セルのサイズが中程度の場合(右 中図)、探索は容易ですが、地図上では、障害物の横を通るため、安全性が低いと考えられる。したがって、このような 問題では、まず、中程度のセルのサイズを用いて、初期の経路探索を行い、次に、より小さなサイズのセルを用いた経路 探索を行うことで、計算効率をあげることができます。

 したがって、本研究室では、未知な環境条件や動的な環境条件を扱う場合、粒度を考慮した方法論を用いている。例え ば、以下の図のように、サンプルされたデータに対し、近似的にデータの粒度を扱うような方法論やデータの特徴的な構 造を抽出するための位相的な関係性を扱うための方法論を提案し、探索や最適化、学習に関する計算論的な手法を提案し ています。




【ロボットパートナーとライフハブ】


   マクルーハンは、1950年代にテレビを中心としたメディア革命がおこったとき、「メディアとは人間の身体の拡張である」 とする身体拡張説を唱え、人間が使う技術というものは、身体の活動の延長であり外在化であると述べています。一般に、身体の 拡張は、受動的存在である道具による拡張(身体の一部となるような存在)、ロボットなどの能動的存在である他者による拡張、 インテリジェントルームのような環境そのものによる拡張などに分類することができます。
 ジョブスは、2001年、デジタルハブの概念を提案し、Macがその中心的役割を担うと述べました。現在、クラウド化が進 み、インターネット上に多くの個人的なコンテンツを保持しつつ、ソーシャルネットワーキングサービス上では、多くの人々と情 報伝達や情報共有を行っていいます。現在のスマートデバイスは、個人情報、環境情報、インターネット情報の他、他者、場所、 モノ、イベントなど、実に多くの情報を扱うためことができます。これらの情報をロボットが利用できるようになれば、人間との 巧みなコミュニケーションを実現することができるようになるでしょう。このような背景のもと、人が様々な情報と繋がるための インタフェース的な存在であるデジタルハブ(LifeHub)の概念が提案されてきました。本研究では、ライフハブとして、 ロボットパートナーとスマートデバイスを主に用いています。

                                              



【システム化とモジュール化】


   本研究室では、QOLとQOCに関する社会的問題の解決を目指し、実社会におけるサービスを考慮したシステム化を通して、 情報技術・ネットワーク技術・ロボット技術・知能化技術に関する要素技術への機能展開とモジュール化を行っています。また、 様々なサービスをシームレスに繋げるためのモジュール間の結合関係を明確化し、相補的に協調しやすいモジュール構造化を目指 しています。

 特に、このようなモジュール化とシステム化に関する議論は、ユービキタスコンピューティングやアンビエントインテリ ジェンス,Internet of Things(IoT)など様々な研究の方向性の中で議論されています。ここで重要なことは、ロボットもまた、インテリジェ ントルームのセンサや情報を利用することにより、ロボット自身の身体性を拡張できる点です。実際、ユービキタスネットワーク 技術とロボット技術の融合により新しいサービスの実現を目指すネットワークロボティクスやクラウドロボティックスに関する研 究開発が行われています。
 本研究室では、情報構造化空間とライフハブの考えに基づくインテリジェントルームの実現、さらには、インテリジェントルー ムと連携したロボットパートナーのコミュニケーションシステムに関する研究開発を行っています。


【インタラクション・デザイン】


   一般に、インタラクションは、二つ以上の存在が「互いに影響を及ぼしあう」ことを意味し、大きく、同種間のインタラクション と異種間のインタラクションにわけることができます。一方、コミュニケーションは二つ以上の存在に対し、「何かを伝えあう」 ことを意味します。語源を遡ると、ラテン語の”Communis”が含まれており、これは共通や共有することなどの意味であ り、単なる情報の伝達過程ではない意思疎通などを含みます。コミュニケーションとインタラクションは、定義上、類似する点が 多いが、本研究では、便宜上、インタラクションは、主に物理的な行為のやりとりを中心として互いに影響を及ぼし合うことによ り「変化」すること、コミュニケーションは、主に社会的な情報のやりとりを中心として伝え合うことにより「共有」することを 重視することとします。さて、この定義にしたがうと、道具による拡張は、主にインタラクションの観点から議論でき、他者によ る拡張は、コミュニケーションの観点から議論できます。

【コミュニケーション・デザイン】


   まず、トマセロの考えに基づき、人間が行っているコミュニケーションについて考え てみます。トマセロは、人間のコミュニケーションが根本的に協力的な営みであり、人間の進化の過程のある時点で、共同志向・ 共同注意・協力的動機を持って協調的に互いにやりとりできた個体が、適応上優位にたったと考えました。つまり、相利共生的活 動という共生の中で始まったと考えています。人間のコミュニケーションの基本的な動機は、「要求すること」、「知らせるこ と」、「共有すること」の3つであり、意図の推察能力と協力的な動機が組み合わされた結果、発信者と受信者が互いに相手を協 力的とみなすようになり、発信者が伝達意図を明示化し、受信者がそれに応えるというコミュニケーションの形式ができあがった と考えられています。
 一般に、コミュニケーションは、バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションに分類できます。まず、ロ ボットパートナーのバーバルコミュニケーションについて紹介します。
 発話は、大きく分けて、独話、対話、会話から構成されます。ここで、独話(Monologue)を他者からの発話を期待し ない単方向の発話、対話(Dialogue)を異なる価値観などをすりあわせるための価値や情報の交換による発話、会話 (Conversation)を価値観や生活習慣などが近い親しい者同士のおしゃべりとして捉えています。
 ロボットの対話システムは、対話の目的の観点から、大きく分けて、タスク指向型対話システムと非タスク指向型対話システム に分類できます。タスク指向型対話システムは、情報支援や案内など、タスクの目的に沿った会話の実現を目的としています。一 方、非タスク指向型対話システムは、日常生活のストレスなどを軽減し、癒しや楽しみをもたらすような会話で、日々の話し相手 などを対象とした雑談などが含まれます。以下、会話の流れを、全体的な傾向、会話のモード、発話方法にわけることにより、コ ミュニケーションのデザインを考えることができます。
 会話の傾向として、話し上手フェーズと聞き上手フェーズに分類します。話し上手フェーズでは、ロボットパートナーが積極的 に発話を行い、情報支援などを行います。聞き上手フェーズは、うなずきなどを伴いながら、高齢者などに昔話や趣味などの内容 を積極的に話してもらうために用いることができます。

 次に、具体的な会話のモードと会話を行うための手段について考えてみます。ここでは、情報構造化空間の概念に基づ き、会話モードを日常会話、コンテンツ会話、情報支援会話、シナリオ会話に分類すます。日常会話は、日々のライフログから抽 出された生活スタイルに基づく会話です。コンテンツ会話はカレンダーやメールなどのスマートデバイス内の個人に関する情報を 利用した発話である。予定のリマインダなども兼ねているため、情報支援会話とも役割が一部重複します。情報支援会話モードで は、インターネットなどの外部から取得するニュースや天気予報に基づく発話の他、興味のあるトピックに関する情報収集などを 行います。シナリオ会話モードでは、話し上手フェーズのように、多くの情報を対話形式で提供します。また、シナリオ会話モー ドでは、ある目的にあわせた会話パッケージが用意され、「健康づくり支援会話パッケージ」や「見守り会話パッケージ」、「外 出支援会話パッケージ」などとして展開することにより、容易にロボットパートナーのコミュニケーションコンテンツを拡張でき ます。
 発話の方法には、ランダム発話、イベントドリブン発話、時間依存発話などがあります。ランダム発話は、長期的な沈黙が続か ないようにランダムに発話を行う手段であり、主に日常会話モードやコンテンツ会話モードと連動して用いられます。また、イベ ントドリブン発話は音声認識やタッチインタフェース、加速度センサや光センサなどの計測の閾値処理など、ユーザ側からのアク セスやシステム的なイベントが発生した際に行います。
 次に,ノンバーバルコミュニケーションについて紹介します。ノンバーバルコミュニケーションに関する研究は、身体動作の分 類や異文化間コミュニケーションなど様々な観点から行われてきましたが、近年では、人間とロボットの共存や共生に関する研究 においても、その重要性が示唆されるようになりました。狭義的な立場では、ノンバーバルコミュニケーションを受信者側の推論 を必要としない「明瞭な言語に置き換えられるようなジェスチャ」と定義されていますが、本研究では、受信者側の主体的かつ、 積極的な探索によって成立する協調的な過程として捉えます。トマセロは、人間特有のコミュニケーションの最初の形態を「指さ し」と「物まね」と考えていますが、この考えは、グライスや、スペルベルとウィルソンの語用論などの影響が見られます。グラ イスは、協調の原理と4つの格率を提案しました。スペルベルとウィルソンが提案した関連性理論では、コミュニケーションとは 情報意図と伝達意図が備わっており、外界に対する知覚情報や記憶、想定など、発信者や受信者が関わっている環境である認知環 境を共有することによりコミュニケーションが行われると考えています。
 ロボットパートナーを用いたノンバーバルコミュニケーションに関する研究では、ジェスチャ、頷き、視線配布、顔の表出な ど、様々な研究が行われています。頷きは、聞き上手フェーズにおいて、話しやすい場をつくるための重要な働きがあります。視 線配布は、ある対象に視線をむける自然な動作であり、注視のように、意識的にむける視線とは異なります。適度な視線配布は、 人間のようなコミュニケーションを演出するかもしれません。

【エクスペリエンス・デザイン】


   ロボットのコミュニケーションに関する従来研究の多くは、シーズ指向であり、ユー ザのニーズを重視したニーズ指向のデザインは、今後、ますます重要になってきます。ユーザにロボットパートナーをどうすれば 使ってもらえるのか、また、長期にわたって使い続けてもらい、普及させるためにはどうすればいいのかを考える必要がありま す。
 例えば、デジタルオーディプレイヤの普及を例にあげると、AppleのiTunesから始まる一連のサービスの展開による ユーザエクスペリエンス(UserExperience)の転換が非常に興味深い。まず、増え続ける音楽CDをパソコン上で デジタルコンテンツとして容易に管理できることを提案し、次にデジタルコンテンツを持ち運ぶためのiPodを開発しました。 続いて、コンテンツの販売と配信へと展開していきました。この一連の展開において、まず、大規模なデジタルコンテンツを管理 する状況を生み出しましたが、既存の小容量のポータブルオーディオプレイヤでは持ち運べなくなり、その結果、iPodが必要 となる土壌を創出しました。また、簡単にプレイリストを作成するインタフェースを提供するとともに、ポッドキャスティングに よるニュースの配信のように音楽を中心に楽しむユーザだけでなく、日々、新しいメッセージに触れたいユーザや自らメッセージ を発信したいユーザをも取り込むサービスを展開することにより、長期にわたって使い続けてもらえる環境を段階的に創り上げて きたような気がします。このようにサービスのデザインでは、「どのような人」を「どのような人」にしたいのかを考えるととも に、ユーザがどのようなエクスペリエンスに満足するのかを考える必要があります。
 ISO9241-210においてコンピュータを用いたインタラクティブシステムのための人間中心デザインの要求などがまと められています。ユーザエクスペリエンスは、「製品、システム、サービスを使用した、および/または使用を予期したときに生 じる人の知覚(認知)や反応」と定義されています。したがって、ユーザにより良いUXを経験してもらうことを目的としたデザ インが重要となります。
 ノイマンは、ユーザエクスペリエンスを「製品に関して、それがどのように見え、学習され、使用されるかというユーザのイン タラクションのすべての側面に関連する。これには、使いやすさと、最も重要なこととして、製品が満たすべきニーズとが含まれ ている」と定義していますが、製品だけでなく、サービスに適用することもできると述べています。したがって、購入前の消費者 の段階から購入後のユーザ、さらには、故障やバージョンアップによる買い換えによるリピータに至るまでのユーザエクスペリエ ンスについて議論する必要があります。
 次に、ユーザのより良いエクスペリエンスを実現するためのロボットパートナーのデザインについて考えてみます。機能がデザ インを形作り、デザインが機能を生み出します。バウハウスは、機能性とデザイン性の統合を重視していますが、初期の頃の製品 のデザインには色んな意味で遊びがあるといわれています。それは、機能が最適化されていないからです。例えば、車の設計で空 気抵抗や重心を考慮すると、それにあわせたカタチが決まってきます。その結果、最適化が進むとデザインに遊びや自由度が減っ てきます。家庭用ロボットパートナーの開発は、現在、サービスとして「役に立つ」機能を模索している段階のため、デザインの 自由度が極めて高いと考えることもできます。
 デザインが変われば、その使い方も変化します。実際に使われてみると、本来なら発掘が困難な潜在的なニーズが山のように見 つかるかもしれませんし、開発者にとって未知な使い方を、ユーザドリブンで発見することができるかもしれません。かつて、ス マートフォンの創生期では、タッチインタフェースや加速度センサなどを活用した新しいインタラクションに基づくアプリケー ションが生み出されたように。

 また、ユーザの頭の中には、自分の経験に基づいたメンタルモデルが残されており、そのモデルは、次の購入や入手に対する期 待感に影響します。スマートデバイスは、個人のコンテンツを次のスマートデバイスへとシームレスに継承できる仕組みを持ちま す。ロボットパートナーの場合、人間がロボットとともに共有した経験や記憶、さらには、コミュニケーションのカタチを何らか の形で継承していく仕組みも必要でしょう。



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